天地初發之時(天地が初めて開けた時)、於高天原成神(高天原に神様が現れました)。名天之御中主神(その名はアメノミナカヌシノカミです)。
古事記は、このような書き出しで始まります。あまりにも素っ気ないので、序文も参照しましょう。古事記の序文を引用すると、日本の始まりは、混沌としてたようです。イメージとしては、文字通り「カオス」。もやもやとした、雲がかかったような状態です。
そこから天と地が分かれ始めました。その時、天界(高天原:たかまがはら)に、天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)が現れました。
次に現れたのは、高御産巣日神(タカミムスヒノカミ)。3番目に現れた神様は、神産巣日神(カミムスヒノカミ)。
この3人の神様は独神(ひとりがみ)と言って、性別はありません。3人合わせて「造化三神(ぞうかさんしん)」と呼びます。「何かを造るモノ」が神格化されているようですね。
造化三神は、何をするでもなく消えて行きました。
4番目に現れた神様が、宇摩志阿斯訶備比古遲神 (ウマシアシカビヒコチノカミ)。5番目に現れたのが、天之常立神(アメノトコタチノカミ)。
この2人の神様も独神で、そのまま消えて行きました。
アメノミナカヌシノカミ、タカミムスヒノカミ、カミムスヒノカミ、ウマシアシカビヒコチノカミ、アメノトコタチノカミ。5神そろって、
別天津神(コトアマツカミ)!
5人の神様、いったい何しに現れたんでしょう?
実はこれ、推理小説でいう「伏線」なんです。後々、思わぬところで伏線が回収されることになります。
宇宙の始まり
日本神話のイントロダクションを読んで、私は本当に宇宙の始まりを思い出しました。
話は脱線しますが、現代科学で考えられている、宇宙の始まりを簡単に紹介しましょう。
宇宙は、時間も空間も存在しない「無」から生まれました。
しかしながら量子論、ミクロの世界では、「完全な無」は存在しません。真空でも次々と、素粒子(これ以上、細かくできない粒子)が現れては消えていきます。これを対生成(ついせいせい)、対消滅(ついしょうめつ)と言います。
ちなみに「宇宙は無から生まれたのではない。宇宙には前世があった」という、「超ひも理論」も存在しますが、説明すると長くなるので省略。
とにかく今から約138億年前、宇宙は「無」から、エネルギーの壁をトンネル効果で抜けて、突然ポッと現れました。
対生成/対消滅のように、無でも「揺らぎ」が発生します。その揺らぎから、越えられない「有」への壁を通り抜けた。これを「トンネル効果」と呼びます。ミクロの世界では、越えられない壁を通り抜けることが、確率的に起こり得るんです。
エネルギーの壁を越えて現れた宇宙は当然、エネルギーの坂を転げ落ちます。転げ落ちる落差を「真空のエネルギー」と言います。転がり落ちる宇宙は、急激に加速膨張します。これを「インフレーション」と呼びます。

光の速さを越えて加速膨張する宇宙は、ある時点で相転移(そうてんい)します。
「液体」の水が氷という「固体」になったり、「気体」の水蒸気になったりすることを相転移と言います。物質が相転移するとき、潜熱(せんねつ)が出ます。気化熱とか誘拐熱とか、聞いたことがあるでしょう。あれが潜熱です。
つまり真空のエネルギーの一部が、熱エネルギーに変わったんです。これがビッグバン。このためビッグバン時の宇宙は、超高温&超高圧状態でした。大きさはグレープフルーツくらいだったらしい。
ここから宇宙はさらに大きくなり、温度は下がってきますが、しばらくは電子が自由に飛び回っている、プラズマ状態が続きました。光(光子)もまっすぐに進めない、「混沌」とした状態です。
それから約38万年後、宇宙の温度が3000K(ケルビン、約2700度)まで下がると、ようやく原子核に電子が捕えられ、光子がまっすぐ進めるようになりました。
原子の周りを電子が回ってるのは、ご存知でしょう?
この時、水素とヘリウムが誕生したんです。これが「宇宙の晴れ上がり」。この時の宇宙の姿は「宇宙背景放射」として、探査衛星COBEやWMAPによって観測されてます。
話は戻って古事記。次々と「対生成/対消滅」する5人の神様、「プラズマ状態」である混沌から生まれた高天原。
この後「日本の晴れ上がり」。日本列島が誕生する、国生み神話へと続きます。