神武天皇が日向にいた時、阿比良比売(アヒラヒメ)という嫁がいて、多芸志美美命(タキシミミノミコト)と岐須美美命(キスミミノミコト)という、2人の子供もいました。
しかしさらに美人を求め、正妻(原文:大后)にしようと考えました。要するに、現地妻を探したわけです。
ある時、オオクメは神武天皇に言います。
「この辺りに『神の子』がいるそうですよ」
「神の子?
何それ、おいしいの?」
オオクメの話は、不思議な神話でした。
三嶋湟咋(ミシマノミゾクイ)の娘、勢夜陀多良比売(セヤダタラヒメ)という、それは容姿端麗なお姫様がいました。
セヤダタラヒメに三輪山の神様、大物主(オオモノヌシ)大神が一目惚れしました。
ここで登場、オオモノヌシ!
原文では、ここで初めて「大物主」と書かれます。記紀を読んだ人は、
「ああ、国造りの時、オオクニヌシが御諸山(三輪山)に祀った名前も分からない神様は、オオモノヌシと言うのか」
と、分かる仕掛けになってます。しかしながら古事記だけを読んだ人は、
「あれっ、国造りの時、オオクニヌシが御諸山(三輪山)に祀った名前も分からない神様は、大年神だったんじゃないの?」
と、疑問を抱くはず。この違いは、もちろん日本書紀にあります。日本書紀によると、オオクニヌシは自分の幸魂/奇魂(さきみたま/くしみたま)を三輪山に祀りましたね。
我々は情報過多。日本書紀をはじめとした、後発の続日本紀(しょくにほんぎ)、日本後紀(にほんこうき)など6つの正史があります。これら六国史(りっこくし)を全て読むと、必ず矛盾が生じます。ちなみに六国史は全て、天皇に「奏上」されてます。
私は前述の通り、これら正史のオリジナル、天皇に「献上」された古事記を基準としています。オリジナルを素直に解釈すると、
「オオクニヌシが御諸山(三輪山)に祀った名前も分からない神様は大年神。その子供である大国御魂神(オオクニミタマノカミ:大国主の魂)が、後に大物主と呼ばれるようになった。大物主は、三輪山の山頂に鎮座している」
それでは何故、太安万侶は「大国御魂神/大物主」と、呼称を使い分けたのでしょう?
おそらく以下に示す、大物主の行動が関係しています。
ある夜、オオモノヌシはセヤダタラヒメを川の上流で待ち構えます。当時は川の上に、厠(かわや:トイレ)がありました。このため、「川屋」が厠の語源という説もあります。
セヤダタラヒメが厠にやってきました。原文には、しっかり「大便」と書かれてます。
「今だ!」
オオモノヌシは丹塗矢(にぬりや)に変身して、セヤダタラヒメ目がけて一直線!
スポッ!
矢は見事、セヤダタラヒメのホトに命中します。ビックリしたのはセヤダタラヒメ。大便の途中ですが、思わず立ち上がってしまいました。
ここまで来たら、もう開き直るしかない。
世界よ、これが日本の神々だ!
セヤダタラヒメは、床に矢を持ち帰ります。そこでオオモノヌシは正体を現します。
オオモノヌシ、なかなかのイケメンだったようです。
こうして2人は結ばれ、富登多多良伊須須岐比売命(ホトタタライススキヒメノミコト)という女の子が生まれました。しっかり「ホト」と名付けられてます。名付け親は、絶対オオモノヌシだな。
これを嫌って、比売多多良伊須気余理比売(ヒメタタライスケヨリヒメ)と改名しました。
そりゃそうだ。ホトタタライススキヒメなんて、キラキラネーム以前の問題。学校で、
「ホトちゃん、ホトちゃん」
と、いじられるに決まってます。
ところで、女性が大便の途中に夜這いをかける神様が「大国御魂神(オオクニミタマノカミ)」だったとしたら、どう思われます?
「大きな国の神様の御魂」が、ホトを目指して一直線!
こんな品の無いこと、書ける訳がありません。ましてや、
「大年神がホトを目指して一直線!」
とは書けない。このため、大物主という神様が(名前を変更して)創作されたと推測します。
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コラム:タタラ 面白いことに気づきました。(1)は(2)と(3)の母親。(2)と(3)は同一人物。 ガイドブックを思い出してください。出雲地方がいち早く「鉄の時代に入った」と考察しましたね。そして出雲は、近畿地方との交流を持っていたことは、加茂岩倉遺跡から明らかです。 |
「とにかく、そんな『神の子』がいるらしいですよ」
「そりゃまた、不思議な話だなあ」
神武天皇とオオクメは、こんな会話をしながら高佐士野(たかさじの:三輪山の北あたり)に行った時、縁起のいい7人の乙女たちが遊んでました。
「神武天皇、どの子がお好みですか?」
「そうだなあ…
今、前に出た子、あの子がいいな」
その娘こそ、ヒメタタライスケヨリヒメでした。
まさに、運命の出会いでした!
「オオクメ、ちょっとあの子に声を掛けてこーい!」
「え~、女子中学生の告白じゃないんだから、自分で言ってくださいよ」
「ほざきやがれ、わたしは大王だぞ」
「まったく、えらそーに」
「えらいもん!」
しぶしぶオオクメは、イスケヨリヒメに声を掛けます。
「あの~、ちょっと」
イスケヨリヒメは、オオクメの黥(いれずみ)を入れた鋭い目を見て、怪訝に思います。
「どーして、あなたの目は鋭いの?」
何だこの子、天然なのか?
オオクメは答えます。
「それは、あなたをよく見るためですよ」
「どーして、あなたの鼻は大きいの?」
「それは、あなたの香りを確かめるためですよ」
「どーして、あなたの矛は大きいの?」
「それは、あなたを食べちゃうからですよ」
「ちょっと待て、コラァー!
お前がナンパしてどーするんだよ!
それに黙って聞いてりゃ、始めは古事記通りだったけど、赤ずきんちゃん入れて、最後は下ネタに走りやがって!」
「だから自分で声を掛けてくださいって言ったじゃないですか。
それより彼女、OKだそうですよ。大王にお仕えしますって」
「えっ、ほんと!」
「あ、機嫌治った」
こうして神武天皇はイスケヨリヒメの家に行き、一夜を共にしました。
以降はダイジェストで紹介。
この後、2人には日子八井命(ヒコヤイノミコト)、神八井耳命(カムヤイミミノミコト)、神沼河耳命(カムヌナカハミミノミコト)という、これまた縁起のいい3人の子供が生まれます。
神武天皇の崩御後、日向に残した息子タキシミミノミコトがやってきて、イスケヨリヒメを娶ります。そして、イスケヨリヒメの息子3人を殺そうと企てます。
イスケヨリヒメは歌を詠んで、息子たちに危険を知らせます。
結果、タキシミミノミコトは次男のカムヤイミミノミコトに殺されます。カムヤイミミノミコトが第2代、綏靖天皇(すいぜいてんのう)となります。