この部分、大変興味深い。少々ネタバレになりますが、3点ほど確認しておきましょう。
1点目:
3と8という数字にご注目。8とは、ヤマタノオロチ神話で考察したように、「たくさんの」という意味。
従って、アメノワカヒコが8年経っても戻ってこなかったのは、
「とても長い間、戻ってこなかった」
という意味になります。
3は「三種の神器」とか、「三貴神」というように、縁起のいい数字です。布を3度振って、蛇やムカデを退散させた神様もいましたね。
アメノホヒが3年経っても戻ってこなかった。実はこの神様が、現在まで続く出雲大社の宮司、「出雲国造(いずもこくぞう)」のご先祖様なんです。縁起を担いで当然ですね。
2点目:
アメノワカヒコが8年経っても戻ってこなかったのは、オオクニヌシの娘シタテルヒメと結婚し、出雲国を獲ろうとしてたから。一般的に、この部分は、
「オオクニヌシは懐柔策をとった」
とか、
「オオクニヌシは、アマテラスの要求をのらりくらりかわした」
などと解釈されてます。
オオクニヌシは各地のお姫様をナンパして、国を大きくしましたね。そのオオクニヌシが、自分の娘を嫁に差し出してます。
私は、オオクニヌシは本当に国を譲るつもりだったと考えます。だって古事記に、そう書いてあるから。
「ワカヒコは、オオクニヌシの娘シタテルヒメと結婚し、出雲国を獲ろうとしていたのです」
主語を変えてみましょう。
「オオクニヌシは、ワカヒコと自分の娘のシタテルヒメとを結婚させ、出雲国を譲ろうとしていたのです」
同じことですね。
3点目:
アマテラスは言いました。
「芦原の中国は私の子、アメノオシホミミが治めるべきと知られた/知らされた国なのです」
オモイカネは言いました。
「葦原の中国は私の子が統治すべきと、言われ賜れた国です」
前述のように、誰が決めたのか誰に知らされたのか、全く不明。
ところが、誰が言ったか知らないが、言われてみれば確かにそうなってます。
アメノオシホミミの子供である瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)という神様が、後で登場します。
ニニギノミコトこそ、現在まで続く天皇家のご先祖様なのです。
オモイカネはタカミムスビの子供でしたね。タカミムスビの娘とアメノオシホミミとの間に生まれたのがニニギノミコト。つまりニニギノミコトは、オモイカネの甥っ子なんです。
何故、誰が言ったか知らない話をアマテラスやオモイカネが語っているのか?
古事記は、「天皇の歴史」を記述した歴史書です。このため、
「天皇こそ、日本を治めるにふさわしい」
という「予断」を持って書かれてます。
古事記は結論ありきで書かれているから、「結論」までの「過程」が雑になったり、省略されたりしています。芦原の中国はニニギノミコトの子孫、天皇が治めることに決まってるから、誰が決めたか誰に知らされたか、過程が飛んでるんです。
思い出してください。ここまでの神話で、何をしたのか分からない小人の神様や、名前も名乗らない神様がいましたね。
ここも結論ありきで過程が飛んでるから、ストーリーが雑になってるんです。
これが古事記を読み解く、重要なカギとなります。