オオクニヌシが美保関(みほのせき:島根半島東部)にいた時、浪間から天之羅摩(あめのかがみ)船に乗り、ガチョウの皮を剥いだものを衣服として帰って来た、小さな神様が現れました。
「お前は誰だ?」
「…」
この神様、何も答えません。
オオクニヌシは、周りの者に問います。
「誰か、こいつを知っている者はいないか?」
その時、蟇蛙(ひきがえる)がゲロゲーロと答えました。
「案山子(かかし)の久延毘古(クエビコ)なら、知ってると思いますよ」
そこで、オオクニヌシはクエビコに問います。
「こいつは誰だ?」
案山子のクエビコは歩くことはできませんが、全てを知っていました。
「これはカミムスビの子、少名毘古那(スクナビコナ)の神です」
「カミムスビの子だと?」
カミムスビの神とは、オオクニヌシが八十神に騙されて、真っ赤に焼けた石に黒こげにされた時、助けてくれた神様です。
そこでオオクニヌシはカミムスビに会って、事の真偽を確かめます。
「これは本当に私の子だ。あまりに小さくて、私の指の間から漏れ落ちた子だ。
お前たちは兄弟となって、堅くその国を作りなさい」
「分りました」
大穴牟遅(オオアナムチ)と少名毘古那(スクナビコナ)の2人の神は、肩を並べて堅くこの国を作りました。
そしてスクナビコナは、常世(とこよ)の国に渡ってしまいました。
ちょっと待った!
ここ、原文通り忠実に書いてます。
オオクニヌシは、何故かここは大穴牟遅(オオアナムチ)に戻ってます。
が、そんなことはどうでもいい!
スクナビコナの正体を突き止めるため、かなり苦労したのに、肝心の「国造り」にスクナビコナが具体的に何をどうしたのか、全く語られてない!
あっという間に常世の国に旅立ってしまいます。常世の国とは、
死者の行く永遠の世界。黄泉(よみ)の国。
古代、海のかなたにあると考えられた、不老不死の国。
(コトバンクより)
スクナビコナが何処に行ったのかも、どうでもいい!
それより、スクナビコナは何をした?
国造りの何に貢献したんだ?
水木先生は、ここにご注目されてたようです。
古事記は前述のようにあっさりですが、水木先生は「伊予国風土記」から引用されてました。
伊予国とは現在の愛媛県。伊予国風土記は現存してません。逸文(完全な形では残ってない文章)として伝わってます。
それによるとオオクニヌシとスクナビコナは、よく喧嘩もしてました。ある時、喧嘩の末スクナビコナは伸びてしまいました。
オオクニヌシはさすがにマズイと思い、何とか蘇生させようと別府の湯を土器に入れ、スクナビコナを浸からせました。しばらくすると、スクナビコナは生き返ることができました。そして何事も無かったように、
「あ~、よく寝た」
と言ったそうです。
何か気づきませんか?
「土器」を「茶碗」に置き換えると、どうでしょう?
そう、鬼太郎と目玉おやじ、そのまんまじゃないですか。オオクニヌシとスクナビコナ、この2人をモデルとして、墓場鬼太郎が誕生したのでしょう。ここからも水木先生が、出雲神話に造詣が深かったことが分ります。
とにかくスクナビコナが何をしたのか、古事記では全く分からないことだけ覚えといてください。